PA-46-350 (Piper Malibu Mirage)
Speed Brake交換作業
以前このHP上でも紹介したことがありますが、Piper Malibu Mirageは最大出力350HPを42in-Hg/2500rpmで発揮する、高高度を飛行可能な飛行機です。Turbo Chargerを二つ装備し、その高高度の飛行性能は素晴らしいものですが、Turbine Engineと違い、出力の増減には非常に気をつけなくてはいけません。その欠点を補い、機動性を確保するために、この飛行機にはSpeed Brakesが左右の翼の上部に一つずつ取り付けられています。電気式のもので、操縦桿に取り付けられたSwitchで開閉ができます。
操縦桿に取り付けられているSwitchを引くと、主翼の上部のSpeed Brakeが左右同時に開きます。当然のことながら、片方だけが作動してしまうと予期しないRoll/Yawの動きとなって現れてしまいます。今回はこの症状の出た飛行機の、Speed BrakeのCartridge交換作業です。
右側主翼下部に取り付けられたWeather Radar。
さて、左と右、どちらのSpeed Brakeを交換するか、これはとても気になります。Malibu Mirageの右翼にはWeather Radarが取り付けられていて、これがSpeed BrakeのInspection Panel(点検用のフタ)の上に存在しているのです。作業を進める上で、このRadar取り外しは避けられないことになります。
ようやくWeather Radarが取り外されました。
このようにまだ整備の履歴も無い新しい飛行機はいろいろと気を使うことが多くあります。新品の飛行機ですから、傷がつかないように気をつけなければいけません。そして、外側に取り付けられているPanelやCoverは、水が入らないように全てがSilicone Sealされています。その上からさらに塗装をされていて、見た目は美しいのですが、まずこれを剥がさないと取り外しができず、実はこの作業の方が手間がかかります。
Weather Radar本体を取り外したら、次はRadar Podの取り外しです。Screwも全て上から塗装をされているので、とても外し辛いものです。塗装を剥がした後、Silicon Carbideを滑り止めとして使って慎重に外します。Screw Driverも先の磨耗していないものを使うようにします。
Radar Podの周りを丁寧に切り取ります。勢い余って刃が滑ってしまうこともしばしばです。作業終了までの残り時間が気になりますが、時間をかけてゆっくりと行います。これが外れると、ようやくSpeed BrakeのInspection Panelが現れます。
外されたRadar PodとWeather Radar。
Speed BrakeのCartridgeを取り外します。開口部が小さいため、なかなか出てきません。まるで知恵の輪です。角度を変え、向きを変えて、ようやく外に出すことができました。
この作業に関しては、取り付けは外すよりも楽な作業となりました。このようなClipを差し込んでSpeed BrakeのCartridgeを固定、上部のScrewを締めて動作の確認を行います。お客の飛行機ですから、変形してしまったScrewは交換して、上部をきれいに塗装しておきます。
取り外した部品を取り付けて、水が入らないように隙間をSilioneで塞ぎ、Weather Radarの動作も確認して作業は終了です。それにしても、納入されてまだ一月程度の飛行機なのに、不具合がとても多いのが気になります。使用される環境が厳しいのか、品質管理に問題があるのか、原因は恐らく後者だと思いますが。生産量ではなく、品質を重視することが重要だと思います。
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